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その顔からうかがうに、悲しみや苦しみといった、別れることに対しての負の気持ちは全くないようだ。
そこは遥香も一緒であった。
そもそも何で付き合い始めたのかお互いよく分からないのだ。“好き”と言われた記憶もなければ、共に並んで歩いた記憶もない。
ただ単に幼なじみというだけで、こうなってしまったような価値も深さも理由もない関係。
それでも三、四ヶ月くらいは続いていたんじゃないだろうか。
「…………理由は?」
遥香は一番聞きたいことを尋ねた。
だらだらと続いた関係。何も今終わらさなくても良いはずだ。
彼氏――遥香がここら一帯の人間に煙たがられているのに耐えられなくなった、というのはないだろう。
もしそうなら完全に自分のせいだ。そして遥香は被害者だ。
気の強い栞のことだから、さしずめ飽きたってとこか。
そう考え答えを待っていると、栞はかすかに肩を揺らしにらみつけてきた。
目には少しずつ水分が溜まってゆく。
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