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翌日は雨だった。
しとしとと静かに落ちる雫。これが“春雨”というやつだろう。
そう言えば昨夜は星が見えなかったな……と意味もなく遥香は思い出す。
昨夜の栞との件があってか、今朝の最寄り駅での人間たちの見る目はますますキツいものへと変わっていた。
今さら傷つきはしないが、居心地は悪くなる一方だ。
一体、おれにどんな罪があるというのか。
“元々の位置”というものが、どれほど大切であるかを再確認した。
電車を降りてから、ビニール傘をさして片手を制服のポケットに入れ、その脇に鞄をはさんで、もくもくと独り学校を目指していく。
すると、ふいにポケットに入れていた手をつかまれた。
びっくりして立ち止まり振り返れば、自分より少しばかり背の高い、同じ制服を着た男がいた。
「おはよう、遥香」
「…………修平(しゅうへい)、……びっくりした――」
――おれを良く思わない奴らかと思った。ついに、手を挙げるところまで及んだのか、と。
それがただの同級生だったことに安心して、ゆっくり息を吐いた。
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