彼女

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あたしの不安が伝わったのか、医者は浮かした腰を再び椅子に下ろし 優しく説明してくれる。 「この病気は細胞ごと殺さないと治らない病気なんだよ。 液体窒素で患部を焼くだけ。 そんなに痛い治療じゃないから、大丈夫。」 顔が引きつっているのを自分でも感じた。 すると看護師さんが優しく優しく続ける。 「液体窒素っていうのはドライアイス。 焼くって言ってもチクっとするだけだから。」 騒いでも仕方ない…。 あたしは隣の部屋へ移り、下着を脱いでベッドへ上った。 股が大きく開かれる婦人科特有のベッド。 上半身と下半身を遮るようにカーテンが引かれ、先程の看護師さんが支度をしている。 綺麗な女性の看護師さん。 あたしに気遣って色々と話し掛けてくれる。 「あの…この病気って感染するもの…ですよね?」 あたしは思い切って口を開いた。 看護師さんは形の良い眉を下げ、悲しそうに答える。 「そうね。 性行為で感染する病気。 だから自分に心当たりがないなら彼氏って事になるよ。」 分かっていたけれどその言葉は重かった。 治療はとてつもなく痛かった。 チクっとするだけ、というのは嘘。 痛みに強いハズのあたしが悶えながら弱音を吐くくらい。 看護師さんが手を握ってくれて 涙越しにとても美しく映った。
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