魔法の箱

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「最後の一つ、早く決めてくれよ」 雄一の最近の口癖。 俺の顔を見る度に言ってる。 …決めたくないのに。 でも雄一は迷惑してる。 だから、俺決めたよ。 「雄一、最後の願い事叶えて」 「やっと決まったか。何? 最後の願い事は」 「さようならのキス」 俺の気持ちを全部込めるから。 だからキスをしたい。 「…合わないな。本当に」 急に引き寄せられて唇に柔らかい感触。 このままずっと… 時間が止まればいいのに… そっと離されると、寂しさで涙がでた。 「何で最後の願い事がキスなわけ?」 涙を拭いながら雄一は話しかけてきた。 今まで聞いたこともない優しい声で。
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