233人が本棚に入れています
本棚に追加
/55ページ
裕子:
「そうだったの。
辛いこと話させちゃったわね。」
ゆみ:
「いえ。ちゃんと、お話しなくてはならないことです。
でも。
こんな私では、弟さんには相応しくないのでは?」
裕子:
(落ち着きを取り戻して、ゆみを真っ直ぐ見つめる)
「あなたは、あなたのまま、ずっと変わらない。
同じあなただった。
今の話をする前も、した後も、同じゆみさんよね。
それに、あの子にはかえって、いいかもしれない。
だって、あの子にも少し、そう、一般的じゃない部分があるのよ。
今度はあたしの方が、ゆみさんに伝えておかなくちゃいけないわね。
あの子、秀一の別の一面を。」
(どう切り出してよいかと、戸惑う)
ゆみ:
「(退行)」
「前に一度、3階のお部屋にいらっしゃる弟さんを、お見かけしました。
退行、ではないでしょうか?」
裕子:
「知ってた?
驚いたわよね?
3階のあの部屋ね、昔は、母の部屋だったの。
母自身が、あの部屋で、自分をリセットしていた。
父の束縛は相当なものだったから。」
ゆみ:
「裕子さんは?
裕子さんは、3階のお部屋には、入らないのですか?」
最初のコメントを投稿しよう!