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ゆみ:
「私、最初にお店へ伺った日、初めて裕子さんにお会いした時から。
裕子さんがお仕事されている姿。
お父様と弟さんのことを大事にされて、思い、話される姿。
ご自分のことより、いつも周りを見てらっしゃる姿を見て。
どんどん好きになってしまったんです。
ごめんなさい。
私、裕子さんが好きです。
裕子さんの姿を見たくて、裕子さんの声を聞きたくて、裕子さんに触れて欲しくて、
それで、こちらに居続けています。
…私、裕子さんが、好きなんです。」
裕子:
(暫くの間理解不能という表情で沈黙)
「ぇ、え?
それは、恋愛の対象として、っていうこと、かしら?
あの、ごめんなさい。こっちこそ、ごめんなさい。私、そういう恋愛のこと、よく分からなくて。
その、思いも寄らなくて。」
ゆみ:
「いえ。いいんです。当然です。」
裕子:
「あの、立ち入ったこと聞くけど。
前の結婚相手って、男性、だった?」
ゆみ:
「はい。普通の結婚ですよ。
私、両親がいなくて、親戚の家で育ったんです。
中学校を出た後、全寮制の看護学校へ進み、それ以来お世話にはなっていなかったのですけど。
お見合いの話を持ってこられて。
義理もありますし。先方も、稼ぎのある嫁は有り難いと、話が決まって。
でも私、男性とは、ダメなんです。
一生懸命演じましたが、夫もそんな私に嫌気が指すのは当たり前ですよね。
浮気は、してくれて良かったのですが、次第に暴力を振るうようになりました。子供も出来ませんでしたから、役立たずな嫁は要らない、と、離婚することになりました。」
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