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裕子:
「あたしには必要がないのよ。
生来、強いらしい。こんなだから、これまで、色っぽい話のひとつも、無かったのかしらね。」
ゆみ:
「今までに、恋人とか、お付き合いした方は?」
裕子:
(なんだか楽しそうに言う)
「それがねえ。
いないの。どういう訳だか。」
ゆみ:
「お仕事と、お家のことに、ずっと尽くしていらしたのですね。(多分それは、弟さんへの、秀一さんへの、愛情。)」
裕子:
「まあ、秀一がね、家庭を持って落ち着いたら、そうしたら考えようかなあ。」
(乗り出して、ゆみの手をとる)
「やっぱりお願い。あなたに、秀一のお嫁さんになって欲しい。」
ゆみ:
「わかりました。
それが、裕子さんの望みなら、私、そうします。
裕子さんの為になら、秀一さんのお嫁さんになります。
裕子さんの為になら、秀一さんの子供を、産みます。
裕子さんの為になら、一緒に暮らして、力になります。
裕子さんの為になら、私、出来ます。
でも、その前に、ひとつだけ。」
裕子:
「あ、あぁ。
交換条件、だっけ。」
ゆみ:
「交換条件というか、私の願いですが。
この先、生きていくための、思い出を、ひとつだけ下さい。
裕子さんの望みを、叶えるために。
秀一さんを、裏切らないように、過ごすために。
ずっと、心の支えになるように。裕子さんとの、確かな思い出を、ひとつだけ下さい。」
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