プロローグ

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その日も、 岩越美雪(いわごえみゆき)は いつも通り 自転車で大学へと 向かっていた。 寮から大学までは 自転車で15分程。 一人暮らしという点では 大変なことも多いが 世間一般から 『オタク』と分類され 更にその中でも『腐女子』と いう分野にカテゴライズ されている美雪にとっては 都合の良い部分が大変 魅力的だったのだ。 「ふぁあ~…  ~ぁ」 大きな欠伸をひとつ。 原因は最近購入した DSとそのソフトに 拠るものが大きい。 以前から 興味を持っていたDS。 中古でいい値段に なっているから、と 購入し、 ついでにソフトも、と 見回した瞬間 インスピレーションを 感じたのがそのソフト  -テイルズオブハーツ-  だったのだ。 新しく入手したら 我慢が出来ない性質の美雪は それから一心不乱にプレイ。 連日午前に食い込むまで プレイし、最近では このように寝不足で ふらふらしながら 自転車を漕ぐのすら 日課になってしまうほど。 「あー、クンツァイト  熱いわー。  マジ嫁に欲しー。  むしろお前が私の  お楽しみライブラリ行!  みたいなーwww」 フヒヒ、と 一般の友人には決して 見せられないような笑みを 浮かべてしまっていると 「っ?!!」 ガクンと衝撃を 感じたと思った途端 体が自転車ごと傾いだ。 路上の石に 乗り上げてしまったのだ。 いつも通りならば 無意識のうちにでも 避けられたはずのそれに 一瞬前の自分を叱責するも 後の祭り。 (うわこけるこの服昨日  買ったばかりなのに  お願いだから破けて  くれないでよやだもう  マジありえ) 車道側に倒れ行く最中 そんなことを考えていると 不意に 鳴り響くクラクション。 「!!!!?」 悲鳴すら あげることが出来なかった。 ただただ 迫りくるトラックを 見つめることしか 出来なかった。 (え、ちょ、ま、私の人生  最期の台詞がアレ?!  どんだけ?!  私どんだけ…!!) 衝撃は、一瞬。 痛みよりも、熱を感じた。 それも、一瞬。 (あ、ラッキー…) 気を失ったにしろ、 即死にしろ、 痛いのは、好きじゃない。
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