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「雪国」
トンネルを抜けると、そこは雪国でした。
――だが、異様に暑い。車窓から見える景色は一面の銀世界であるにも関わらず。
車内では冷房が効いているはずなのだが、汗が止まらず、シャツが張りついて非常に不快。
見れば、窓は自由に開けられるらしい。金属製の取手がある。
ところがそれに触れた途端、手が別の生物のように跳び跳ねた。熱い。
どういうことだ。窓を開け新鮮冷涼な外気を早急に取り入れねば倒れてしまいそうだというのに。
手に、あるだけのハンカチを巻けば、しばらくは大丈夫そうだ。
意を決して取っ手を掴み、窓を開けた。
流れ込んできたのは新鮮冷涼な外気ではなく、敢えて例えるならば溶鉱炉から漏れる灼熱の焔気。木製の車内が炎に包まれた。
なるほど。ここの大気は高温かつ高濃度の酸素で成り立っているのか。雪と見えたものは、先人達に含まれていたミネラル分の燃え滓であるらしい。
――そして灼熱の雪国は静寂を取り戻した。
以上、1日目
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