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「走れメロス」
メロスは激怒した。
――激怒せねばならぬ理由があった。かの邪知暴虐の王は除かれねばならぬのに、王は未だ王であった。
メロスには結婚を控えた妹がいた。結婚の儀式には新品の短剣が必要である。短剣は王の住まうシラクサまで、メロスが買いに行かねばならぬ。メロスは一計を案じた。
しかしメロスは捕らえられた。純朴な牧人として城へ入り、純朴な牧人として振る舞ったところ、近衛に捕らえられた。
メロスは再び一計を案じた。どうしても妹の結婚式に出ねばならぬと言い、石工の友人を人質とすることを申し出た。王はメロスが刻限までに戻ることを条件に、石工の命を担保としてメロスを解放した。
王はメロスは戻らぬとほくそ笑み、人々もそれに同じであった。
しかしメロスは刻限の間近に、ほうほうの体で城へと戻った。人々はメロスを友義の士と讃え、王を激しく非難した。
かくして邪知暴虐の王は除かれた。
――純朴な牧人か、狡猾な策士か。
以上、4日目
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