2433人が本棚に入れています
本棚に追加
/532ページ
「ちょっ……や、やめれ!」
「あん、あきら可愛いよぉ」
「人の話を聞――あはははっ! 待っ、無理~っ!」
横っ腹を指で軽くつままれるようにくすぐられ、笑いたくもないのに声をあげてしまう。
肩や腰がビクッと震え、足をバタバタさせても、くすぐったくて笑いが漏れてしまうのだ。
「や、やめんかいっ!」
「いたっ」
さすがに怒ってゆうなの頭をひっぱたく俺。
予想以上にうまい具合に入って、パシンと乾いた音が高く響いた。
「もー……」
よほど痛かったのか、ゆうなはくすぐる手を止めて叩かれた患部を押さえた。
強く叩きすぎたらしい。
ゆうなを叩いた俺の手も、じんじんと軽い鈍痛がした。
「えっと……ごめんな?」
ちょっとやりすぎたかなぁ、と謝りつつも、とりあえず立ち上がり、ゆうなから距離を置く。
無意識的にゆうなの逆襲を恐れていたのだろう。
……だが、その警戒に意味がなかったことを、俺は思い知る。
「まったく……しつけが足りなかったみたいね」
ぞっと背筋が凍るような声色。
それと共に顔をあげたゆうなの表情は――
まるで捕食者のようだった。
最初のコメントを投稿しよう!