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「ほら~ 何してるの?」
(サァー)
木々の葉の縫い目から無数に降り注ぐ太陽と涼しげな風が僕を包む「この場所、覚えてる?」
彼女は結城夏美。俺(神木悠)の幼なじみ。
漠然と立ち尽くす僕に彼女は問う「さ、さぁ~?」
曖昧な、答えにならないような声で答える。
「もー! 忘れたの!? この神社の前で二人で結婚しようって約束したじゃない! 忘れたとは言わせないんだからね!」
「けっ、結婚ん!?」
驚いてそれ以上何も言えない僕にそうそう、やっと思い出したかと言わんばかりに満足そうにうなづく彼女。
「確か、この柱の下に…あった!」「な、何が…!?」
「じゃじゃーん!これが目に入らぬかぁー!」
彼女の手には子供が書いたであろう字で(けっこんしょうめいしょ)とカタコトのひらがなで書かれている…ようにみえる?
「ちゃーんと書いたんだから!君は僕と結婚するんだよ!」
…思い出した!小さい頃に俺はよくコイツに泣かされてた。で、あまりに俺が泣き虫なもんだったからコイツが…「ゆークンは男の子でしょ! 泣いたらいけないんですよ! もー!ゆークンは僕が居ないとダメなんだから~! はい、コレに名前書いて」
って訳のワカラン内に書かせられたんだっけか…
「そんなね子供同士のお遊びだろ!第一、お前の親父さんたちだって許す訳ないだろ!」
おもわず声を荒げて言った。
「…そんな事気にしてたの?それなら大丈夫♪うちのパパもママもゆークンならって大賛成♪って」
「う、嘘だろ~!!」
こうして、俺の高校最後の夏が始まった。
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