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『ゆークン…昨日あった事覚えてる?』
『え?だからー、夏美に連れられて神社でガキの頃の話した事だろ?』
そうだ、その事ははっきりと覚えている。
『けっこんしょうめいしょ』とやらの紙切れの話だ。
「…それがどーしたんだ?」
夏美は言うのを躊躇っているかのように黙り込む。
重たい沈黙………。しかしその沈黙はすぐに打ち消された。
夏美は何かを決心したのだろう。
ついにその口を開いた。
「ゆークンあのね……私ね……、ゆークンにね…………」
ようやく喋り出した夏美だったが、急に涙を流し始めそこで話がストップしてしまった。
「ど、どーしたんだよ夏美!?」
訳もわからず目の前で泣きだされたのでどう対処していいかわからない。
しかも夏美の泣き止む気配もゼロ。
「…あのね……あのね……」
まるで言葉を失っているようだった。
しかしその姿が何故か愛おしく感じた。
そして気づいたときにはその小さな身体を力強く抱きしめていた。
「――!!わ、わりぃ!!」
焦って離れようとしたが気づくと夏美の腕が身体を包んでいて身動きが取れない状態になっていた。
「お…おい、夏…」
驚いて夏美を見ると夏美の涙は止まっていた。
思わず言葉を失ってしまう。
すると夏美が口を開いた。
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