1枚目

6/7
前へ
/28ページ
次へ
「…私ね、ゆークンに会えて本当に良かった…。ありがとう」 (なんだ、それだけか。焦って損した) そう思うと次第に口元が緩む。 「なんだ?そんな事言う為にわざわざ…」 言いかけた言葉が夏美によって遮断された。 「それとね…お願いがあるの…。この『けっこんしょうめいしょ』をゆークンがずっと持ってて欲しいの」 「ん?ああ、わかったよ」 半ば投げやりな感じで返事を返した。 「ありがとう…。それともう1つ持ってて欲しい物があるの…」 「まだあるのかよ」 「うん……。この…このペンダントを持ってて欲しいの」 そう言って肩にぶら下げていたバックから取り出した。 そのペンダントは木で作られた星型のペンダントだった。 「…星……?」 着色をしていない、木を削ってそのままペンダントにしたようだった。 「星じゃないよ。ヒトデだよ」 夏美は真剣な目つきでそう言った。 「星じゃねーの!?…てか、え!?ヒトデなの!?」 「そうだよ……だからね…それを私だと思って…だいじに…してね…」 そう言って夏美は再び泣き出してしまった。 言葉に詰まる。 しかし今度はすぐに泣き止み潤んだ瞳で見つめてきた。 するとその直後、夏美の顔が凄いスピードで眼前に迫ってくる。 驚いて思わず目をつぶってしまった。 その刹那、唇に何か柔らかい物が重なったのがわかった。 すぐに目を開けようとしたが何故か開かない。 「ゆークンありがとう…。バイバイ…!!」 「え?バイバイって夏…」 目を開いたときには辺りは暗く、既に夏美の姿は無かった。 しばらくボー然と立ち尽くす。 するとどこからともなく自分を呼ぶ声が聞こえてきた。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

52人が本棚に入れています
本棚に追加