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「…私ね、ゆークンに会えて本当に良かった…。ありがとう」
(なんだ、それだけか。焦って損した)
そう思うと次第に口元が緩む。
「なんだ?そんな事言う為にわざわざ…」
言いかけた言葉が夏美によって遮断された。
「それとね…お願いがあるの…。この『けっこんしょうめいしょ』をゆークンがずっと持ってて欲しいの」
「ん?ああ、わかったよ」
半ば投げやりな感じで返事を返した。
「ありがとう…。それともう1つ持ってて欲しい物があるの…」
「まだあるのかよ」
「うん……。この…このペンダントを持ってて欲しいの」
そう言って肩にぶら下げていたバックから取り出した。
そのペンダントは木で作られた星型のペンダントだった。
「…星……?」
着色をしていない、木を削ってそのままペンダントにしたようだった。
「星じゃないよ。ヒトデだよ」
夏美は真剣な目つきでそう言った。
「星じゃねーの!?…てか、え!?ヒトデなの!?」
「そうだよ……だからね…それを私だと思って…だいじに…してね…」
そう言って夏美は再び泣き出してしまった。
言葉に詰まる。
しかし今度はすぐに泣き止み潤んだ瞳で見つめてきた。
するとその直後、夏美の顔が凄いスピードで眼前に迫ってくる。
驚いて思わず目をつぶってしまった。
その刹那、唇に何か柔らかい物が重なったのがわかった。
すぐに目を開けようとしたが何故か開かない。
「ゆークンありがとう…。バイバイ…!!」
「え?バイバイって夏…」
目を開いたときには辺りは暗く、既に夏美の姿は無かった。
しばらくボー然と立ち尽くす。
するとどこからともなく自分を呼ぶ声が聞こえてきた。
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