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お気に入りのキャバ嬢を泊めたのに何もしないの?
そんな男存在しないでしょ?
私が食べおわるとさっと手際よく洗い物をし車の鍵を手にした。
本当に送っていく気らしい。
私は成澤の車に乗り少し緊張していた。
「妻は菜々を産んですぐから遊びがひどくて。若かったから家に帰らないことも多くて」
成澤は静かに語り始めた。「育児放棄したんです。何度もきちんと育児をするように言ってもよけいひどくなるだけでついに菜々にまで手をあげるようになってしまって。離婚をし引き取りました。本当にどこにでもあるような話ですよ」
「どこにでもあるなんてそんな簡単な言い方しないで!菜々ちゃんはすごい辛かったはず今記憶はないだろうけど、無意識に虐待の記憶は刻まれてるんだよ!成澤さんだってすごく苦しんだんでしょ?シングルパパになるなんて相当な不安や辛いことがあったはずでしょ!」
私はついカッとなって熱くなってしまった。
私は他人事のように思えなかったから。
育児放棄に虐待!絶対に許せない。
うちの父親みたいだから。
「ありがとう。なんだかすごく嬉しいよ」
成澤は優しく微笑んだ。
不覚にもまたドキッとしてしまう。
「あっうちここだから」「じゃまたお店に行くから」
「ありがとう。ねぇ、成澤さん。最近明るくなったしそのうっとうしい髪型やめて短髪にしてみたら?」
「そうだね。最近は菜々のことで頭が一杯で自分に構う余裕なかったからな」
私は去っていく成澤の車をいつまでも見つめていた。この胸の高鳴りに気付かないふりをしているのも限界かもしれない。
ブーブーブーブー。
部屋に入るなりまた着信があった。
「はい」
「俺だよ。なんで最近電話でないんだよ。冷たいな。男でもできたか?…あはは。そんなわけないよな。おまえが」
電話の主は不倫相手だった。
もう三年は続いている。
相手は9つ上。私のすべてを知っている男だ。
「おまえはよー一番目にはなれないんだもんな。なりたくないんだろ。昔のように……」
「やっやめてよ!!言わないで。わかってるから。」「くくくくっ熱くなるなよ。おまえには俺が必要なんだ。何も期待しない、何も望まない、俺がな。あはははっっ!」
男は狂ったように笑った。
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