―そっくりな二人―

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自分は方向オンチかと問われれば、そうでもないと答える。 実際にそうでもないし、かといって道案内ができるわけでもない。 つまり普通のレベルなのだ。 だけど今日は特別に運が悪かったのだ、と香澄は思った。 「ここ何処だろう?」 そう問いても誰も答えてはくれないし、状況も変わりはしない。 椎名香澄は今日、転校するはずの青春学園に行く途中で道に迷っていた。 いわゆる迷子だ。 今日は転校初日なため、歩いて来たのが間違いだったと香澄は後悔していた。 辺りをキョロキョロ見回しても誰もいるはずがなく、一人、途方に暮れるしかなかった。 「サボろうか…」 サボろうと思えばサボれる。 家に帰って、具合が悪いと学校に連絡すればいいだけだ。 幸い、家にはだれもいない。 でもそれは、最終手段としておこうと香澄は胸の奥にしまった。 (誰かいないかな…) そんな願いを心の内で思ったのが叶ったのかわからないが、目の前に青春学園の制服を着た男の子がいた。 .
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