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香澄は迷っていた。
いくら青春学園の生徒でも、見ず知らずの男の子に声をかけていいのか…
それに、今の状況をなんと説明する?
『迷子』だと説明するのが手っ取り早いが、そんなことは香澄のプライドが許さない。
うん、としばらく考え込んだ後、迷子というのは伏せて尋ねることにした。
「あの…」
おずおずと香澄が声をかけると、その男の子はゆっくり振り向いた。
そしてしばらくの沈黙の後、香澄は首を傾げた。
なぜか?
自分と同じ顔の人間が目の前にいるからだ。
もちろん、香澄のほうが髪は長いが、鼻の形や顔の輪郭、強気な瞳など、香澄によく似ていた。
世の中には三人くらい自分と同じ顔の人間がいるというが、ほんとにいたんだな、と香澄は思う。
きっと、この男の子にロングヘアーのカツラを被せたら、香澄二号の出来上がりだ。
「…なっ…」
男の子は驚いている。
自分と同じ顔の人間が話し掛けてきているのだ。
驚かないはずはない。
「すみません、青春学園は何処ですか?」
だが、さほど驚いた様子もなく、香澄は問いかけた。
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