紅―その目は流れ出る血の如く―

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…二本の剣を持ったブリキの兵士がその二刀を天に掲げる。 その身体の歯車が軋み、黄銅の鐘の音が響く。 日付が変わったことを十二の鐘で知らせた。 空には靄がかかった紅い月。 赤い月明かりの中…いや、『赤い』のは月明かりじゃないか…。 『赤い』のは俺の身体と足元に広がる水溜まり…。 それは今もなお源泉から熱を保ったまま流れ水溜まりを拡げていく。 ―この数日で何人目…いや、『人』じゃないか。 『人』は俺だけ…。 人…? ???「フッ…違うか、俺も同じか…」 それだけ呟くと両目を軋む右手で覆う。 ???「この身は魔飼いにして凶…、人であることを捨てた身だったな…。」 次に手を離したとき… 世界は赤から紅へと変わった…。
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