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「いやぁ、それもそうなんだけどさぁ…
って…それより、今日は俺午後から非番なんだけど、どっか行かない?」
子犬が散歩を強請るようなその姿に昔はトキメキもしたものだけど…
今じゃウザイ以外の何ものでもない。
「あぁ~悪いけど今日はパス」
アタシの言葉に、一瞬見せる悲しそうな顔。
その顔は少し愛おしいかもしれない。
最低ねアタシ。
「今日はって、今日もじゃないか…」
残念そうにうなだれはすれど、彼はけしてそれ以上は要求したり責め立てたりはしない。
優しくてヘタレな彼。
そんな彼を良いことに、アタシはいつもやりたい放題だった。
「そんな顔しないでよ、今日は別に用事があるの…じゃね!」
そう言ってアタシは彼を一人残して部屋を出て行く。
バッチリメイクで着飾るアタシを見て彼はいつも何を思ってるんだろ?
振り返りもしないアタシの背中には、その時、細く笑った彼の視線が向けられていた。
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