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遊斗は斬られた喉を抑えてのたうちまわった…
やだ…みんな死んじゃう…
………怖い…
彼が…彼が人殺しになっちゃう…
嫌っ…嫌だ…
怖い…怖い…怖い…っ!!
「やだょ…怖い…
もう…止めてぇ… さん…」
暴走する彼を止めたのは、私の怯えて震える声だった。
とても小さな声なのに彼は聞いてくれた。
振り向いた血濡れの彼が怖くて…
でも……とても綺麗な笑顔で …
彼はそのまま手を広げてアタシに言った。
―おいで …ミケ…―
問われたアタシは迷いなくその腕の中に飛び込んだ。
でも、だって…おかしいよ?
彼は人殺しで …
狂ってて…
さっきまで怖くてたまらなかったのに……
なのにアタシはその腕の中へ帰る事に迷わない。
彼の腕に抱かれると血濡れの手がアタシの頭を撫でた。
「ミケちゃんメッ!
もう勝手に遊びに行ったり、危ないことしたりしちゃ駄目だよ??」
「う…うん…ごめんな…さぃ…」
「ふふふ…良い子だねぇ…ミケちゃん。
さぁ、帰ろうか??」
アタシは手を引かれて歩いて行く。
今だに激痛にのたうちまわる男達に、彼は通りざまに吐き捨てた。
「斎藤 宏明
(さいとう ひろあき)
高橋 裕太
(たかはし ゆうた)
青木 知明
(あおき ともあき)
鈴木 勝
(すずき しょう)
前原 夏樹
(まえはら なつき)
そして……橘 由希斗君(たちばな ゆうと)…?
君たちの未発覚の前科からプライベート…親兄弟の住む場所まで全部調べてあるよ?
また俺と遊びたかったらいつでもおいでね??
生きてたらまた会おう…バイバイ?」
それはきっとハッタリでもなんでも無い。
全部…彼の手の上での出来事だったんだ…
血濡れの彼に手を引かれ、私はそのまま屯所への道を歩く。
「ねぇ…何処からが、あなたの手の内にあったの?」
アタシが思わず問いかけると、彼は…
「………全部かな…?」
っと背筋が凍るくらいに綺麗に笑った。
その事件があってからアタシは彼に逆らわなくなった。
少し…大人しくなった。
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