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― 他に好きな人ができたんだ。   章広は暗い部屋の中で静かにそう言った。 あの時の章広は、どんな顔をしていたのだろう。 ちゃんと見ておけばよかったと、花になってしまった章広を眺めながら、思った。   章広が出て行ってしまった部屋に一人残されて、わたしはようやく一筋の涙を流した。 なぜ別れ話をわたしの部屋で切り出したのだろう。 そのことだけは、章広を恨んだ。 言葉は場所に、居着いてしまう。
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