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ガラスのコップに入った章広を、水がこぼれないようにゆっくりとベランダまで移動させた。 章広は水の表面張力に従いながら、ゆらゆらとその中を漂っていた。 嬉しそうに、揺れていた。   わたしは、今しがた買って来た小さな鉢植えに肥料を混ぜた園芸用の土を敷いた。 そしてそこへゆっくりと丁寧に章広を植えた。 根、を持たない章広を、そこへ差しこむように、切り立ったその先を刺した。 花になってしまった章広がこれで少しでも長く生きていてくれればいいと思った。 どうか、その美しい花びらを散らさず、生きていてくれればいいと思った。
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