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あれは入社して最初の三ヶ月研修が終わり、各々に配属先も決まり、ようやく場所と人に馴染んで来た頃だった。 秋、だった。 指導役を引き受けてくれた上司は、時々特別ゲストを他の社員の中から招待した。 あの日のゲストは章広だった。 章広はワインの特別講習の回に招待された。 ホテルで取り扱っているワインはある程度銘柄が決められていて、それらは全てフランスの直営農場から仕入れているものだった。 白が三種、赤が五種、ロゼが一種、それから特別にオーダーされた時にだけ提供するシャンパンが二種だ。 もちろん事前に客から注文が入れば、その銘柄を取り寄せておくといった配慮もあった。
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