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「状況は把握した。早速向かうぞ」
金を払った後、カウンターから立ち上がって出発の準備をするライズ。
だがそこへセフィラが不満げに声を上げてきた。
「もう行くの?!
私さっきココに着いたばかりで今日はもう疲れちゃった……明日にしない?」
出されていた水をすすり、いかにも嫌そうな顔で文句を垂れるセフィラ。
先程着いたばかりというのはライズも同じなのだが、その辺りは性格の違いなのだろう。
「馬鹿を言うな。
忙ねば鉱夫に被害が出るかもしれないんだぞ?」
「馬鹿ですって?!
……はん! たかが“♠のⅥ”に言われたくないわ」
明らかな挑発。
互いの一言が気に障ったのか、腕を前で組み、睨み合う二人。
一人マスターは呆れ顔で様子を眺めている。
「お前は“♥のⅧ”だろ?
それに俺は前より一つランクが上がってるんだ。これくらいではさして変わらん」
「なんですって?! 私はあなたが疲れてるんじゃないかと思って言ってあげてるのに!」
「お前が休みたいだけだろう?
卑しく金を搾り取るハゲ鷲が」
「誰がハゲよ?!
このでこっぱち男ッ!!」
激しく言い争う二人。もうこの勢いは止まらないようで。
ぶつかる視線に思わず火花が見えそうだ。
その口論に誘われるように周りに酒場の客も集まってきた。
「おっ? なんだなんだ、痴話喧嘩でも始まるのか?」
「ねーちゃんやっちまぇえ!!」
二人を取り囲むように増える野次馬たち。
酒の入った客にとって喧嘩は最高の肴(さかな)のようだ。集まる皆の表情は生き生きとしている。
いい大人だからこそかもしれないが、情けないことこの上ない。
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