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更に闇が深くなってきたせいか視界は約三メートル程。
周りの状況が確認出来ないのは敵に不意を突かれやすい。それ故にか、ライズがふと歩みを止めた。
「まずいな……この闇の中を歩き回るのは危険だ」
「うーん……確かにこの状態はキツイわね。仕方ない、やりますか!」
そう言うとセフィラは長槍を取り出した。
手前に掲げ、ぷつぷつ詞(ことば)を唱えつつ、槍を半回転させて地面に突き立てる。
すると、槍の刃の中央に嵌められている宝石が白く輝き、それに呼応しながらライズたちの周辺が日に照らされたように明るくなった。
「光魔法が使えたのか?
確かお前の属性は風だと思ったが……」
光る槍をまじまじと眺め、感嘆の声を漏らした。
その声に槍を背へ収めたセフィラに、にこやかな笑顔が浮かぶ。
「私の本来の属性は光なのよ。知らなかったかしら? まぁ鳥人族は風の属性が強いから両方使えるんだけどね」
「だったら早く光で照らしてくれたらよかったのにぃー……」
眩しいのか、足元でカーティスは目をしばしばさせつつそう云った。
くすりと笑みを綻ばせ、セフィラはしゃがみ込んで子竜の頭を軽くなでている。
「長時間照らしてると魔力が尽きちゃうでしょ? 勿体ないから温存しておいたのよ」
「だからタッグを組めと言ったのか。ガスで炎が出せない以上、光に頼る他ない。魔力が尽きれば倒せる物も倒せなくなる」
「そ~ゆ~こと!
――ここからが本番なんだからっ!!」
そう言って立ち上がり、その場で武器を構えるセフィラ。
はてな顔を浮かべるカーティスの横では、ほぼ同時にライズも剣を鞘から抜き出し構えている。
二人の振る舞いでやっとカーティスも奥から近付く気配に気が付いたようだ。
威嚇しているのか、小さく唸り声を上げている。
何か、重量の大きな物の歩む音が薄暗い鉱山内に響き渡る。
それに伴い、段々と辺りには土気色のガスのようなものが漂ってきた。
光に誘われるように重なる足音。
鮮明になる物の形。
辺りを照らす光を浴び、跫音(きょうおん)の主が姿を現した。
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