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それは、まるで小さな鉱山のようだった。
否、一般の人間から見る限り小さいとは言いがたい。
ニ、三メートル程もある巨体には多種多様の鉱物が纏わり付き、脚や腕の関節からは蒸気のようにガスが噴き出している。
「……ずいぶんリッチな身体つきだこと」
「このゴーレム、このまま売っぱらったほうが高く売れるんじゃないか?」
呆れ顔でライズを一瞥し、すぐに視線をゴーレムへと戻した。
ゴーレムはというと、少しの間二人を見つめていたが、直後に敵と認識したよう。
突如多量の鉱物が付き、鋭利な刃物の様になった拳で殴りつけてきた。
素早く後ろに飛び退き様子を伺うライズ。
巨体の割に素早い攻撃。当たれば身体は串刺しだ。死は勿論避けられないだろう。
すると、いつの間にかセフィラは宙へと舞い上がり、ゴーレムの背後へ回り込んでいた。
瞬時に長槍の切っ先を背の中心へと突き刺すが――。
「ッ?! かったぁ!!
何よこいつ?!」
鈍い金属の接触音が鉱山内に反響する。
だが背を捉えたにも関わらず、ゴーレムの硬い装甲に一撃を加えることはままならなかったよう。
「当たり前だ。相手は石だぞ!
並の攻撃では傷もつか――」
「ライズ、危ないッ!!」
咄嗟(とっさ)に気付いたカーティスが叫ぶ。
振り向きざまに、またゴーレムが殴り掛かってきたのだ。
セフィラの様子に気を取られ、一瞬ライズの反応は遅れてしまう。
「ぐっ――!!」
鋭い痛みに表情が歪む。
擦れ擦れで拳をかわそうとするが右腕に掠ってしまい、色の乏しい地の上を鮮やかな紅い飛沫が彩った。
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