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右腕を押さえ、一旦間合いを取るライズ。衣類は裂かれ、傷口からは脈打つ毎に血が溢れ出る。
負傷した相方の名を呼びながら、カーティスが駆け寄ってきた。
「……大丈夫だ。
たいした傷ではない、下がってろ」
酷く心配する竜を慰め剣を左手に持ち替える。両方扱えるのか、ぎこちなさは一切無いようだ。
「あちゃー……まだ行けるわねライズ? ちょっと本気出すから引き付けておいて!」
そう言った後、ライズより後ろへ下がるセフィラ。
目で了解の合図を送り、傷口を布で縛り付け、ゴーレム目掛け地を蹴り上げた。
金属と岩が掠れた音を立て幾重にも響き合う。
衝撃によりぱらぱらと塵が舞い、徐々に鉱物が引き剥がされていった。
「あぁ~あ……もったいない……」
先の顔はどこへやら。
背後で観戦していたカーティスが物欲しげに小さくぼやいた。
商店街でのことをまだ根に持っているのか、怨みがましそうにライズを見ている。
ライズとて命懸けなのだ、煌めく宝石に気をつけている暇など無いというに。
一方でセフィラは槍を掲げ、佇んでいた。
光魔法により輝く槍を縦に持ち、瞼を伏せつつ呪文を詠唱する。
静かに詞を唄うその姿は祈りを捧げる修道女のよう。
すると槍の矛先からは徐々に風が渦巻き始め、セフィラ自身をも包み込む。
「――よっし、準備完了!」
セフィラが動いた。
地を翔け、五メートル程も在った距離を一気に詰めていく。
先程とは比べ物にならない程、そのスピードは上がっていた。
風を纏うことにより素早さや攻撃力を上げているのだろう、段違いの威力でゴーレムの堅固な皮膚を貫いた。
ガラガラと石の崩れ落ちる音と共に、ゴーレムの巨体がよろめく。
幾重にも集中的に攻撃を受けて無残に崩れ、足元には腕の成れの果てが瓦礫と化していた。
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