深夜の来客

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街へと続く街道から少し逸れ、森の手前に手頃な場所を見つけて腰を下ろすライズ。 野営の仕度を調え、周囲に落ちていた薪へと火を付けた。 徐々に大きく、暖かく身体を照らしだした炎をぼんやりと見つめている。その姿はどこか憂鬱そうなのだが。 するとそこへカーティスが短い後脚をちまちま動かし寄って来た。 「今回の仕事は楽勝だったねぇ」 「仕事に楽も苦もあるか」 楽しげに言うカーティスを諌めるように軽く小突くライズ。 その後、ごそごそと懐から小さな皮袋を取り出した。軽く揺らすと中から僅かに金属の擦れる高い音がしている。 「だが……大した仕事でなかったのは確かだ。報奨金も安い」 金の入った小袋を眺めても、出るのは深い溜息のみ。 彼は仕方なしにそのまま無言で袋を懐に戻した。 「む~……、今度はもっと良い仕事が入るといいね」 「ああ。 まっ、そう上手くはいかないだろうがな」 現実をぽつりと漏らし、早々と寝支度の準備をするライズ。 そのさなか、突然森の奥からがさがさと何かが走ってくる音が聞こえた。作業の手を止め、瞬時に音源へと視線が向けられる。 素早く腰に身につけていた片手剣へと手を伸ばし、ライズはその場で身構えた。カーティスは既に彼の背後へ移動済である。 それと同時に、森の奥から中年の男性が飛び出してきた。 顔に映るは恐怖と若干の安堵。 息も絶え絶えに焚火の前へと倒れ込んでいる。 その手前、ライズは己の予想と相反する者の出現に少しばかり残念そうな表情を浮かべているのだが。 「人?! よかっ、た……。 たた……た、助けてくれ! まっ、魔物に追われているんだっ!!」 「その姿……商人か? 商人がこんな夜更けに何をしている?」 「そんなことより魔物がっ! こっ殺される……助けてくれ!」 酷く怯え、ろれつもままならぬ商人。通じぬ会話に怪訝な面持ちを浮かべた、その時――。 ォォオオオーーン――……!! 闇夜に響き渡る遠吠え。 そのすぐ後、茂みの奥より、いくつもの殺気がライズたちへと向けられた。
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