深夜の来客

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ヘルハウンドが去った後、カーティスが空からぼとりと商人を地に落とした。 大した高さではなかったのだが、衝撃は中々のものらしく腰を押さえずにはいられないよう。 その後、痛めた身体を起こし上げライズへ怯えた瞳を差し向けた。 「あ、あんた……一体、何をしたんだ?!」 震えたか細い声を上げて商人は恐る恐る尋ねる。彼はその視線を一瞥し、剣に付着した血を掃った。 そして面倒臭そうに一言。 「群の長を倒しただけだ」 と、さらりと流す。 ヘルハウンドの生態を知っての行動だったのだろうが、瞬時にやってのける彼の行為に商人は驚きを隠せないようだ。 「さて、お前は何をしていた? 真夜中に野外を出歩く事がどれほど危険か……分かっているだろう」 怯える商人を鋭い眼つきで問い質す。僅かに肩を弾ませ、商人はライズを見た。 ただ、挙動不審に陥った商人の目は泳ぎまくっているのだが。 「……。 探し物をしていて……道に、迷ってしまったんだ」 「ほぅ? 野外で探し物をするなら、普通は護衛なり何なりを雇うはずだが? “言え”。何をしていた?」 容赦ないライズの問いにぐぅっ、と口ごもる商人。だがやはり後ろ暗いのか、相変わらず目は泳ぎっぱなし。 その時、苦しそうな喘ぎ声と共に、先程倒したはずのヘルハウンドが小さく呻いた。 『――エセ……! タ……タマゴ……ヲ……カエ……セッ!!』 「ッ?!」 「……喋れたのか、お前」 それを最期にヘルハウンドの長は息絶えた。感心するライズの横で、商人はぽかんとほうけている。 そんな商人の意思などお構いなく、脇に抱えられた商売鞄をカーティスにすかさず奪わせた。 そしてそのまま中身の確認させる。鞄の奥深くまで漁り、がさがさとまさぐるカーティス。 その鞄の中からはヘルハウンドの言葉通り、いくつもの魔物の卵が見つかった。
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