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「……やはりな。
ヘルハウンドは獰猛だがむやみに人間を襲いはしない。何かあるとは思っていたが……」
今にも泣きそうな顔で俯く商人。
そんな商人を見下ろしながら、カーティスは馬鹿にしたようにクスクス笑っている。
「この辺りのヘルハウンドは希少種とされている。生体や卵の乱獲は制限されているはずだが……?」
「すまない! 許してくれ!!
最近、生活が苦しくて……。この森に高く売れる魔物の卵があると聞いてやってきたんだよ。
卵を見つけて盗ったまではよかったんだが、奴らに見つかってしまって……」
「その途中見えた明かりに気がつき、助けを求めたってわけか」
押し黙ったまま、商人はゆっくりと頷いた。
「このまま街へと通報すれば、お前は捕まり、牢獄行きは確実。だが……」
商人の未来予想を坦々と述べる。
しかし、何やら間を置きライズは言葉を区切った。
その様子に商人がはてな顔を浮かべたのは言うまでもない。
「別に俺は通報する気はない。
お前を通報したところで、得になることなど何も無いからな」
「じゃ、じゃあ……、見逃してくれる……のか?」
怯えきっていた商人の顔に、若干の笑みが浮かんだ。先程までの動揺が僅かに鎮まる。
だが、ライズの一言により、その表情は再び凍り付いた。
「いいだろう。
ただし、お前一人で街まで帰れるものならな……」
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