深夜の来客

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困惑する商人を横目にライズは落ちていた石つぶてを森の中に投げいれる。 その直後、打撃音と共に森の奥から狼の悲鳴が聞こえた。     「……さっきのハウンドだ。 このまま俺らから離れれば確実に殺られるだろうな」 顔色一つ変えずに話すライズ。 死への恐怖か、はたまた彼の言葉に恐怖を覚えたのか、商人の頬からは汗が一筋垂れ落ちる。 ごくりと固唾を飲み、再び表情が強張った。 「さて、ここからが本題だ。 このままお前が殺されるのを見るのは忍びない……。かといって無償で人助けをする程お人よしではないんでね」     「……報酬か」     「そゅことぉ~! 世の中はぜんぶギブアンドテイクなんだよ~」 何故か得意げに語るカーティス。意味を分かって使っているのかは不明だ。     「……わかった、何が望みだ?」     「そうだな……。 まずこれからの護衛料として500G、さっき助けた分で250G、それにヘルハウンドの卵二個ってところかな?」     指を折り、ぽつぽつ数えるライズ。 値段が吊り上げられる度に、商人の顔から笑みが消えるのがよくわかる。     「そんなに取るのか?! 私の二ヶ月分の給料だぞッ!!」 逆上し、立ち上がる商人。 己の生活が掛かっているのだ。必死になるのは当然なのだろう。   しかし、ライズの前ではそれも無意味なよう。 「そんなこと俺が知るか。 こちらはいきなり魔物と戦わされ、その上密猟にも目をつむったんだ。それに残った卵は六個。充分元はとれるはず……」 と、すぱりと意見を両断してしまった。怒る商人の勢いにも、慌てる様子は微塵もないようである。     「しかし――っ! ……わかった、取引に応じよう。その代わり……護衛はしっかり頼む」     やはり分が悪いと感じたのだろうか。少し悩んでから潔く頷いた。 己の命も掛かっているのだ。頷くしか道はない。     「やったぁ! 商談成立だねぇライズ」 「ああ、そうだな」 そう言って、ライズは微笑を湛える。その横でカーティスは嬉しそうに羽ばたき、ライズの頭へと舞い降りた。 欝陶しそうにそれを払い、腰を寝床へと下ろすライズ。 そんな中、一人商人は複雑そうな顔を浮かべ、二人の姿を呆然と眺めているのであった。
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