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―序章―
人々が魔法と呼ばれる特殊な力を扱い、野外には無数に魔性の物が蔓延る。
ここはそんな混沌とした世界。
そんな世界に、ある青年はいた。
闇夜に煌めく白銀の短髪に、藍の鋭き双眼。その顔付きからして、歳は十代後半といったところであろうか。
身には全身を覆い隠すように長き衣を纏っているが、夜の街道を憶することなく堂々と歩んでいる。
その隣には背に大小四枚の羽根と二つの角をもつ小柄な竜を連れていた。
子竜は大きな緋色の眼を瞬かせ、重力に逆らい空を舞っている。
「カーティス、次の街まではあとどれ程だ?」
ふと青年が立ち止まり、竜に向け言葉を掛ける。
問い掛けに応じ、上空へと舞い上がる竜。名はカーティスと言うらしい。
しばし宙にて辺りを見回した後、忙しなく羽ばたきながら青年の元へと戻ってきた。
「上から見たかんじもうちょっとかかりそうかな? 今日はもうおそいし……そろそろ休もうよ、ライズ」
「……そうだな」
僅かに間を置いた後、こくりと頷き了承した模様。
ライズと呼ばれた青年……彼の者こそが、この物語の主人公となる者である。
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