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「なんだよ、照れてんのか?」
からかい口調でそういうと、顔をしかめながらとっとと行けと促される。
ケイはそんな俺たちを眺めてはクスクスと笑い、楽しそうに聞いている。
あぁ、きっとこの二人は大丈夫、確信めいた想いが俺を安心させた。
『…たーもっちゃーんっ!!』
どうやら我慢の限界らしい。
藤と葵のじとっとした非難の声が上がる。
「あーもうっ!!わかったよ!!…またな政宗、ケイ」
そう言って藤と葵の背中を押して部屋を出ようとすると、背中越しに二人の声が聞こえる。
…久しぶり、元気にしてた?
…この姿見ていってんの?
まだ少しぎこちないはにかむような笑い声。
俺もつられるように思わずクスリと笑みをこぼした。
探り探り、ゆっくりとそうやって絆を取り戻していけばいい。
二人のやり方で。
バタンッ。
アパートの鉄扉が音を立てて閉まる。
今、政宗の部屋はからっぽの箱じゃなくなったんだ。
きっとこれから先も、ずっと。
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