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【二年D組教室(8時30分)】
B組である淳と別れて、悠は二年D組の教室へと向かった。教室に入ると、窓際にある自分の席に荷物を置いて、頬杖をつく熊次郎の姿が視界に入る。
悠は熊次郎の正面にある自分の席に座り、後ろを振り返って問いかけた。
「どうかしたのか? 今日はやけにぶすっとしてんじゃねえか」
「別に何でもないよ」
「何でもないような面してないぞ?──まさか、何かの事件に巻き込まれてる、とか?」
「まぁ、俺にとっては事件みたいなものなのかもしれないな」
事件、と聞いて、悠は瞳を輝かせて熊次郎の机の上に身を乗り出した。
「事件ってなんだ! 教えろウド!」
「誰がウドの大木だ、コラ!」
「あいたっ」
ごつん、と熊次郎が悠の頭を小突く。悠は痛む箇所を片手で抑えながら熊次郎を睨み付けた。
「なにすんだよ、“言葉のあや”じゃねえか」
「意味が違うだろ」
熊次郎が呆れたような表情を浮かべて一息吐く。悠は細かい事は気にすんな、と無邪気な笑顔をしてみせた。
「でも、大木までは言ってねえぞ」
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