第一限 凸凹コンビ

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 悠が体勢を変えると、教室の出入口で黄色い声を上げる数人の女子生徒が視界に入った。  自分の周りに集まる女子生徒の間を縫って登場した人物は、席に座る悠と熊次郎の姿を確認すると、女子生徒に挨拶を交わして二人の元へと歩み寄る。 「今日もモテモテだな、色男」 「羨ましいか?」 「うっせー」  【阿久津 晴樹(あくつ はるき)】──悠と熊次郎と同じ二年D組の生徒。スラッと高い鼻の端正な顔立ちに、長身。学年問わず女子生徒に人気が高く、本人に至っても女好き。  それ故、彼の容姿に憧れると同時に、男子生徒にとっては煙たい存在でもある。  がっちりとした大柄の熊次郎。細身で、熊次郎ほどではないが長身の阿久津。この二人に挟まれると、悠の小柄さが一層際立たされる。それを嫌い、悠は二人が揃っている時には頑なに席を立ち上がろうとしなかった。
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