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「俺より背の高い奴は全員敵だ、シッシッ」
「敵だらけじゃねえか」
あっちへ行け、と言わんばかりに悠が掌を振った。そんな悠に対して、阿久津に好意的な視線を送っていた女性軍からの冷たい視線が突き刺さる。
小柄で推理小説バカの悠に、熱い視線を送る女子生徒がいない事は言うまでもない。
阿久津はそんな悠を軽く一蹴して自分の席でもない椅子に座り、熊次郎に話しかけた。
「そういえば、あれから何か進展起きたのか?」
「なんにもないよ」
「おい、俺も交ぜろよ。で、何の話だ?」
阿久津と熊次郎の会話に、悠は怪訝な表情を浮かべながら尋ねるが、
「別に気にする事じゃないって」
熊次郎はそう言い、教室を出ていった。
「マジでなんなんだよ、今日の熊は。阿久津、お前なにか知ってるのか?」
「どうだかな。まあ、熊がお前に言ってないことを、俺が勝手に言える訳ないさ」
「あいつの言ってた“事件”ってのと何か関係あるのか?」
「なんだそれ?──ああ、そういう意味か」
悠の口から出た“事件”という言葉の意味を悟った阿久津は「下手な表現をするやつだ」と、笑みをこぼした。一人で納得する阿久津に、悠の表情に不機嫌さが増していく。
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