第一限 凸凹コンビ

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【新校舎二階廊下(8時40分)】  熊次郎は二年D組の教室を出てトイレで用を足した後、廊下で一点を見つめながら突っ立つ【小林 大河(こばやし たいが)】を見つけた。 「なにしてんだ?」 「え? あっ、熊か」  声をかけると、大河は狼狽(ろうばい)したように肩を揺らして振り返った。 「なにボーっとしてんだよ」 「べ、別に何でもないって」  と、慌てた様子で返す大河は、明らかに普通の反応ではない。怪訝に思い、先程まで大河の向いていた先へと視線を移すと、集団の中に一際輝く女子生徒がいた。  【高橋 恭子(たかはし きょうこ)】──先月、淳が所属する広報部がおこなった、『湖南高校男子生徒が選ぶ! 可愛い女子ベストテン!』の上位に入っていた二年A組の女子生徒。  開けられた窓から吹き込む風にさらりと揺れる黒髪。眩しい程に愛らしい笑顔。周囲の男子生徒の視線も、心なしか彼女に集まっている。大河も彼女に好意的な視線を送る一人なのだろう。
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