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「なるほど、高橋に惚れてるのか」
「え? あ、いや、その……」
極端な反応を見せる大河に「分かりやすいやつ」と言って、熊次郎は大河の肩を軽く叩いた。
「淳だけには言うなよ? あいつに言ったらすぐに広まるからな」
熊次郎は「分かってる」と口元を緩めた。
「まあ頑張れよ」とだけ応援の言葉を投げ掛け、熊次郎は二年D組の教室に戻っていった。
席で頬杖をついている悠の姿を見やると、自分の席──悠の後ろの席──に座り、なんとなく悠の背中の数ヶ所を人差し指で突っついてみた。
あひゃ、と異様な声を上げながら上下左右に身体を反らす悠の動きを見て、このバカには恋の悩みなんてないだろうな、と考えてみる。実際、悠の頭の中にそんな悩みなどないだろう。
「ちょ、いつまで突っついてんだよ!──あひゃっ」
湖南高校七不思議、二年D組から聞こえる不気味な声、そんな噂話はない。
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