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「あなた、一体何を読んでるの?」
「虹村静治の新作、輪廻殺人だけど、どうかした?」
「今、何の授業だか分かってる?」
「え? おい、熊。今何の授業?」
「……英語」
「英語!」
「聞くなぁ! そこも教えない!」
熊次郎から聞いたまま復唱した悠に、亀井が怒りを露にした表情で怒鳴った。熊次郎にしてはとんだとばっちりである。
「大体、なんて残酷な内容なのよ」
「そりゃあ殺人事件だから。あらすじは……」
「言わんでいい! 授業中に小説なんか読んじゃ駄目です」
口を尖らせて、「分かったよ、英語の時間は小説読まないからさ」と悠が言うと、
「英語の授業じゃなくても駄目!」
亀井が張り上げた声で言った時、授業の終わりを知らすチャイムが鳴り響いた。
一連のやり取りに生徒達が笑う中、熊次郎は呆れたように溜め息を吐いて窓の外に視線を移した。先程までいたグラウンドの生徒達の姿は、今となっては一人として残っていなかった。
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