第一限 凸凹コンビ

11/25
前へ
/175ページ
次へ
「岩城くん、今何か言ったかな?」 「うわっ、亀ちゃん!」  背後から現れた亀井有紀の姿に、悠は驚いて振り返った。亀井は腰に手を当てて、 「亀井先生、でしょ!」 「そう呼んで欲しいの?」 「呼んで欲しいとか欲しくない、じゃないでしょ!」 「別にいいじゃんか、亀ちゃんって呼ぶ方が可愛いし」 「え? 可愛い? そうかなぁ」 「そうそう、可愛い可愛い」 「それなら悪い気はしないわね。それじゃ、その可愛い“亀井先生”は放課後に職員室で待ってるからね」  そう言い残し、亀井は職員室へと踵(きびす)を返した。 「ちょ、亀ちゃん、そりゃないっしょ!」 「亀井先生、よ」  嘆く悠に対し、亀井は背を向けたまま上げた片手を振って答えた。  二人の様子を見守っていた淳は「亀ちゃんの勝ちぃ」と笑い、熊次郎は「アホだな」と、悠に冷たい言葉をかけた。  ほぼ毎日、といってもいいような悠と亀井のやり取りに、周囲にいた生徒達も「“今日も”亀ちゃんの勝利」と笑みを浮かべた。 「あの性格じゃ当分結婚出来ねえな」
/175ページ

最初のコメントを投稿しよう!

767人が本棚に入れています
本棚に追加