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「岩城くん、今何か言ったかな?」
「うわっ、亀ちゃん!」
背後から現れた亀井有紀の姿に、悠は驚いて振り返った。亀井は腰に手を当てて、
「亀井先生、でしょ!」
「そう呼んで欲しいの?」
「呼んで欲しいとか欲しくない、じゃないでしょ!」
「別にいいじゃんか、亀ちゃんって呼ぶ方が可愛いし」
「え? 可愛い? そうかなぁ」
「そうそう、可愛い可愛い」
「それなら悪い気はしないわね。それじゃ、その可愛い“亀井先生”は放課後に職員室で待ってるからね」
そう言い残し、亀井は職員室へと踵(きびす)を返した。
「ちょ、亀ちゃん、そりゃないっしょ!」
「亀井先生、よ」
嘆く悠に対し、亀井は背を向けたまま上げた片手を振って答えた。
二人の様子を見守っていた淳は「亀ちゃんの勝ちぃ」と笑い、熊次郎は「アホだな」と、悠に冷たい言葉をかけた。
ほぼ毎日、といってもいいような悠と亀井のやり取りに、周囲にいた生徒達も「“今日も”亀ちゃんの勝利」と笑みを浮かべた。
「あの性格じゃ当分結婚出来ねえな」
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