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「真菜、どしたぁ?」
「どしたぁ、じゃないよ。あの話、まだ広めてないよね?」
「あの話?」
真菜はそう言いながら淳に詰め寄り、周りを気にしながら小声で囁く。
「裕美(ひろみ)の話よ」
「ああ、太田ちゃんの話かぁ!」
「大声で言わないでよ!」
「ごめんごめん。ええと、どうだったかなぁ? そういえば、大河には話したような気がする」
「小林先輩だけ?」
「おう、大河だけ」
「よかったぁ。あの話、間違いだったからちゃんと訂正しといてね」
「おう、任せとけー」
そう言ってVサインを作る淳に、真菜は「絶対広めちゃ駄目よ」と念を押した。
しかし、悠が「あの話って何?」と尋ねると、「朝に話そうとしてた話なんだけど」と淳が答えた。そんな淳に、
「お兄ちゃん!」
と、制止する声が響く。真菜はもう一度「絶対に言わないでね!」と言うと、三人の前を通り、体型に似合わぬ軽い足取りで食堂へと入っていった。
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