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「おっす、大河」
「ん? ああ、お前等か」
ひょい、と椅子に座りながら言う悠に、大河はどうでもよさそうに答えた。
大河は熊次郎がいることに気付くと「話してないだろうな?」という風な目付きで合図を送り、熊次郎は無言で頷いてそれに応えた。
席に座るなり大河の傍らに置かれた参考書に目をやって、「うげっ、昼飯時にも勉強かよ」と、悠が頭を抑えた。横を見ると淳も同じ仕草をしている。
成績の悪い淳とは同じクラスの生徒とは思えない。進学クラスでも不思議じゃないやつ、というのが大河に対する周りの印象だ。
「勉強以外にすることねえのかよ」
「大河は勉強に恋してるんだもんなぁ?」
そう言う悠と淳の二人に「好きな女くらいいる」と反論したくなる大河だったが、にやつく熊次郎が横目に見えて口をつぐんでしまった。
その直後、何かが床に落ちたような音が響く。それと同時に辺りに生じるざわめき。
なんだなんだ、と好奇な視線が集まる。しかし、生徒同士がぶつかって、持っていたトレイから食器を落としただけ。騒ぎの原因となった女子生徒が必死で謝っている姿が見える。
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