登校

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 そんな彼の隣でふて腐れたような表情を浮かべるのは、【岩城 悠(いわしろ ゆう)】──大柄な熊次郎とは対照的に、小柄で細身の身体に撫で肩。他の学生達と比べても、その身長は一段落ちて見える。  茶色く染めた長めの髪。左耳にはリング状のピアスが三つ。だらしなく着こなした制服。どれも、高校生としては誉められたものではない。 「くそっ、これだけ満員の電車の中じゃゆっくり本も読めやしねえじゃねえか!」 「分かりきってることを言うなって。大体、その容姿で真面目に小説読んでるってのも、結構奇妙なもんだぞ?」  ぶつぶつと文句を垂れる悠に、熊次郎は穏やかに言った。うっせー、と呟いてから悠が口を開く。それに熊次郎はまたか、と溜め息をついて肩を竦(すく)めた。 「お前も一冊でも読んでみれば分かるって、ミステリーの面白さが! 血腥(ちなまぐさ)い殺人や呪われた村、醜い遺産相続、嵐の山荘とかエトセトラ……。んで、不可解な謎を更に深める密室やダイイング・メッセージ、アリバイトリック。それを鮮やかに解決する名探偵。──ああ、素晴らしい、素晴らし過ぎる!」 「アホくさっ」
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