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信号を渡り、流れる車を横目で眺めながら緩やかな坂道を上がって行くと、私立湖南高校が姿を現した。
この高校は近年改装された新校舎と、旧校舎と呼ばれる校舎がコの字型に繋がっている。
新校舎の東側一階にある生徒達が使用する正面玄関(下足場)は入口近くまで来ると、鬱陶しく思えるほどに人で溢れていた。
人の流れに身を委ねるように進み、下駄箱に靴を入れて校内用の上履きに履き替える。二人が下足場を右手に進んで新校舎の階段に差し掛かった時、やたら活発な声が響いた。
「よう! 凸凹(でこぼこ)コンビ!」
そう声を張り上げたのは【中村 淳(なかむら じゅん)】──悠と熊次郎とはクラスが違う二年B組の生徒。能天気過ぎる性格で、教師達から問題視されている生徒の内の一人。
淳はにんまりと白い歯を見せて、二人の方へと歩み寄った。
「うっせー、能天気バカ」
「あれぇ? 熊しかいないのに悠の声がしたぞぉ」
間延びした声で言い、淳はキョロキョロと見回して「不思議だなぁ」と付け足した。
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