登校

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「わざとらしいんだよ!」  悠が眉間に皺を寄せて言うと、淳は「おお、悠もいたのか! 小さくて見えなかったよぉ」と、惚(とぼ)けたような声を出した。 「そうなんだよ。小さ過ぎて、俺も眼鏡かけてないとよく見えなくてな」  熊次郎が淳に加勢するように言う。そんな熊次郎に、悠は大袈裟な身振りで「裏切り熊ー!」と嘆いた。 「二対一か……構わねえ、よし、来い!」  意味不明な言葉を発し、悠が不恰好なファイティングポーズをとる。周囲にいた生徒達が好奇の目を向けてクスクスと笑みを浮かべた。  熊次郎と淳は「アホだな」と吐き捨てて階段を上がった。悠は慌てた様子で、 「ちょっ、ここはツッコミ入れてくれねえとしまらねえって!」 「ボケが雑なんだよ」 「そうそう、ボケが雑ぅ」  熊次郎が言い、淳が間延びした声で復唱する。悠は舌打ちして、二人の後に続いて階段を上がった。
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