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『可愛い茅陽ちゃん、僕はどうやら君が好きみたいだよ』
それからは、内緒の恋。
誰にも話せない。
誰にも話してはいけない。
あたしはバッグの中からポーチを取り出して、そこに入っている指輪を手に取った。
ピンクゴールドの可愛い指輪。
左手の薬指にはめて、そっと空にかざしてみる。
「幸人先生…」
そっと呟くだけで満たされていく。
こんなにも幸人先生が好き。
この指輪は幸人先生が『予約』としてくれたもの。
高校を卒業したら、結婚しようって言ってくれた。
「茅陽ー」
聞き慣れた声が背中から聞こえて、あたしは足を止めて振り返った。
少し遠くからボブを揺らしながら走ってくる姿。
見慣れた顔――自分と全く一緒の、鏡を見ているような顔。
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