ヒツジが一匹

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  「こんにちはー」 顔を覗かせると、あたしの声に気づいた先生と目が合った。 「…来たね、茅陽(チハル)ちゃん」 ふわって笑う口元。 知的な眼鏡の奥の瞳も細められる。 「こっちおいで」 手招きに導かれて、あたしは室内に入り先生のすぐ前の椅子に座った。 いつも通り。 なにもおかしいことはない。 「はい、お名前どうぞー」 「幸人(ユキト)先生、知ってるくせに」 「決まりだから仕方ないんだよ。お名前は?」 「…緒方茅陽、です」 「はい…茅陽ちゃん。調子はどう?何か変わったことある?」 幸人先生はあたしに微笑みかけてくる。 白衣に身を包んだ幸人先生。 カルテを片手に。 「いいえ。…あ、でもこの間、体育頑張ったら、やっぱりしんどかった…です」  
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