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「そっか」
「やっぱり動かないのが一番だね」
「でもつまらないでしょう?」
レンズ越しの優しい視線は、あたしの心の内まで見透かしているようで――時々、体が強張る。
幸人先生に嘘は通用しない――解っているあたしは、渋々頷いた。
先生は笑う。
「じゃあ今日もいつも通り、点滴しようか」
寝台に誘導されて、いつもの通りに寝転がる。
白い天井が視界に広がった。
右側からあたしを見下ろす幸人先生の顔が現れる。
「ちょっとちくっとするよ」
「ちくっとじゃないよ、いつも」
他愛ない会話。
ふざけあい。
視界の片隅に薬液が入った袋が下げられて、腕にアルコール綿の冷たさが感じられた。
すぐ後に少しだけの痛み。
針の侵入する感覚。
先生の指先が液の落ちる早さを調節する。
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