ヒツジが一匹

4/12
前へ
/91ページ
次へ
  「そういえば、高校どう?」 「うん…普通」 幸人先生が苦笑した。 時計を確認しながらあたしからそっと離れる。 「カーテン引いとくね。終わる頃にまた来るから」 「ありがとーございます」 にこりと笑った先生の顔が、ジャッという音と共に青い布の向こう側に消えた。 「…」 隠れて溜め息。 点滴をしていない方の手を額に寄せた。 ――あたしは昔から病弱だ。 持病のために運動をすることができない。 本当はみんなと同じようにグラウンドを、体育館を、通学路を、自由に走り回りたい。 普通にできることが、あたしには出来ない。 そんな悔しさを抱えながら、今も昔も――遠くから見つめているだけ。 カーテンの向こうから、新しい患者さんと幸人先生、看護師さんの話し声がする。  
/91ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加