ヒツジが一匹

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  視界の上部には定期的なリズムで一滴一滴と落ちる薬液。 「…」 この薬液のお陰で体調が保たれていると言っても過言ではない。 定期的に幸人先生の勤務する病院に通って、体内に薬を流し込まなければいけない。 でなければ、あたしはもっと酷い目眩とだるさと闘わなければいけなくなる。 でもこんな液体に生活を支えて貰っていることを、心の何処かで情けなくも思っていた。 ぐるぐると頭の中をもやもやが巡っているのを、カーテンが開く音が遮った。 「時間だよー」 「…ん」 幸人先生によって肌から針が抜ける。 テープで穴を塞がれて、あたしは起き上がった。 「せんせー」 「なにー」 「あのね…」 言いかけたときに、運悪く看護師さんが先生を呼ぶ声が割り込んできた。  
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